◎2022年12月末、AWCの活動内容などをお知らせする季刊誌『PAG-ASA(パグアサ)』

第101号を発行しました。

 

今回の号には、あすばるフォーラム2022で開催された

“#MeToo#WithYou~私たちの居場所作りワークショップ”の報告や、

“殴る蹴るだけが暴力じゃない!DV防止法改正に向けて”と題したエッセイ等が載っています。


2022.10.3 「情報カード」を新しくしました。

2022.4.25 「相談はこちらへ」更新しました。「Multilingual Hotline」をやさしい日本語で、せつめいしています。

2021.12.12 「命と体を考える連続セミナー」

第1回 日本での夢は何ですか。勉強?仕事?それとも愛??

~ベトナム語で動画を見て、                                                            産婦人科の専門家に体のことを聞きましょう~

技能実習生や留学生が、日本で想定外の妊娠や出産となったケースについての相談が、AWCにも時折寄せられる。多くが2030代の彼らは、そもそも本国で性や生殖について学ぶ機会がなかったという。「何となく妊娠しているかもしれないとは思っていた。でも何も知らなかったので、いつどうなったら子どもが生まれてくるのか最後までわからなかった」と相談の中で語った日本語学校留学生もいた。彼女たちに、自身の身体について正しい知識をもってもらい、安心して夢の実現に向かってほしいという思いから、今回の企画がたてられた。まずは近隣地域にもっとも多い、ベトナム人の若者を対象とした。

 

 主催したのは、千鳥橋病院(福岡市東区)とベトナム人の青年有志、アジア女性センターも加盟する移住労働者と共に生きるネットワーク・九州の三者。1212日(土)、福岡市東区の公民館で上記タイトルのセミナーを開いた。

 

同病院助産師さんが、男女のからだの仕組み、妊娠、避妊や中絶、性感染症について、一般的な「性教育」をパワーポイントにまとめた。全編をベトナム語に翻訳し、ベトナム語の解説ナレーションもつけた。日本語での対訳の資料も配布され、医療の知識がなくてもわかりやすいものだった。

視聴後の質疑では、ベトナム人参加者からの身体の仕組みについての質問や、妊娠がわかった時の不安への対処についての問いかけに対し、参加した日本人の医療関係従事者や行政書士ら専門家から、丁寧に回答された。

 

今回の企画では広報の時間が短かったため、当事者であるベトナム人の若者の参加が少なかったのが、一つ残念な点だった。ただ、近隣の日本語学校から参加した男子学生は視聴後に「(留学生らが)飛び込み出産になってしまうのは、言葉の問題や病院へのアクセスの難しさ、制度の知識がないこと、経済的な不安等、様々あるのではないか。このような企画を学校でもやってほしい」と感想を述べてくれたことで、主催側は今回のセミナーを開いたことに大きな意義を感じることができた。

参加した支援者からは、過去に支援した外国人の出産のケースで感じた課題、例えば在留資格や医療保険、本国手続き等について、別々のところで情報を得なければならず苦労が多かったことも語られた。支援にあたってはワンストップで相談できるところがないため、他機関、他職種との連携が大切であることも確認できた。

 

外国人留学生や技能実習生を対象とした「命と体を考えるセミナー」はシリーズで、計4回が予定されている。今後の開催時期は未定だが、第二回目「妊娠・出産」、第三回目「日本での育児」、第四回目「社会制度」の予定。詳しい情報が必要な方は、アジア女性センターまでお問合せを。

 

窓からの景色

20211120日(土)、ふくおか自由学校が主催した講座「社会を映し出す鏡・在日朝鮮人女性とジェンダー」で、福岡女子大学の徐阿貴(そ・あき)さんのお話を聞きました。会場は、補助席が設けられるほど多くの市民の関心を集めました。お話を振り返って考えます。

 

 

 

日本が植民地支配をしていた時代に、徴用、仕事、結婚などで朝鮮半島から移り住んだ人たちとその子孫は、戦後日本が主権を回復すると国籍をはく奪された。以後定住や永住の外国人としてこの社会に暮らしてきた。民族としての制度差別に加え、家族内では家父長制のもとのジェンダー差別と、女性は特に何層もの差別の中を生き抜いてきた。特に育児家事の役割を持つ女性が教育を受けることは少なく、読み書きのできない女性が多かった。

特に移民の第一世代は非識字率が高かった。子育てが一息つき中高年に差しかかったころ、夜間中学に学びの希望を見出した。多い時には教室からあふれるほどの女性たちが通ってきたと言われる。「学校にはたくさんの窓がある。世の中がよく見えるように」とある女性が書いた詩にあるように、夜間中学で学ぶことは社会を観る「ちから」となった。

1990年代に入ると、東大阪市市教委が在籍者が増えた太平寺夜間中学を分室することにした。ところが、学習環境はさらに劣悪となり改善には程遠かったことから、在籍生徒による夜間中学の独立を求める運動が始まった。約8年の長きにわたる運動と交渉の結果、分室は独立校として認められた。社会の中でも家族の中でも声をあげられなかった女性たちが、根源には植民地支配と民族差別があるとして、教育を受ける権利を主張した。その後、女性たちは自主的な教育機関「うりそだん」やデイケア「さらんばん」などを立ち上げ、エンパワメントしていく。

民族的にもジェンダーとしても差別の対象である女性たちが、自らの権利のために立ち上がった。このことの意義は大きい。「今私たちができることは、声を発せない人の小さな声に耳を傾け、声を聴くことだ」と講師は締めくくった。

 

 

 

 ニュースや新聞で聞いていたおぼろげで点のようなできごとが、徐さんのていねいな報告で線となってやっとつながりました。字が読めなくて、電車を降りる駅を車窓からの景色を注視して覚えるしかなかったという話に、言葉のわからない異国に住んでいたころ、降りるバス停名がわからず一生懸命窓から見覚えのある建物が見えるのを待っていた自分を思い出しました。女性たちが独立運動に光を見出していたころ、男性は何をしていたのだろうか?というのが私の疑問でした。夜間中学に通うこと自体夫の怒りを買う女性もいて、銭湯に行く恰好で勉強に通った女性もいたとのこと。学ぶことを止めなかった多くの女性たちの表情が目に見えるようでした。

多文化多民族の社会は混ざり合うのではなく、モザイクのように境界線で囲まれているので見える風景が異なる。見ようとする眼と聴こうとする耳を持ち続けたいと思いました。AWCの相談電話も、まさに女性の声を聴くことから始まります。

 

なお、福岡市では、20224月に公立の夜間中学が開校されます。学校の窓からはどんな社会が見えて行くのでしょうか?(S.A

 

故郷の味 ~故乡味儿~

私の故郷は中国の黄河の下流に位置する中国東部・山東省です。世界遺産で有名な泰山、孔子廟があります。主要作物は小麦、粟(あわ)、高粱(コーリャン)、トウモロコシ、主食の85%が小麦粉です。小麦粉で使った料理にはうどん(面条)、万頭(馒头)、水餃子()、肉まん(包子)などがあります。お米を主食とする日本では飲食店で食べるか、専門店で買うのが普通なことが分かりました。

小さいころから、母のまねをしながら母の味を覚えました。当時は料理専用の計りやタイマーもなく、大きな中華鍋一つで、いろんな料理を作りました。特に水餃子は、旧正月「春節」(1月下旬~2月上旬)に家族が集まって作り、年越しを祝って食べる時に欠かせない料理です。肉まんは季節の野菜を使って、旬の味を楽しむこともあります。日本に来てからは、中国で食べたことないごぼうや高菜など使い、日本風の肉まんを味わうことができました。

新型コロナウイルスが流行してから、健康を意識する人が増えました。無添加、天然酵母、有機野菜などよく耳にします。そこで、天然酵母を使う肉まんのレシピを紹介したいと思います。私の故郷では天然酵母は「面引子(メンインズ)」と呼ばれています。本場の味に近付きたい場合、八角や五香粉を使うのが決め手です。

「面引子」とは・・・小麦粉200gに対して、白酒(中国の度数の高いお酒)10gとぬるま湯60gを加える、まとまるまでこねて、奇麗なボールにいれラップをし、温室に1日置き発酵させます。生地の2倍ぐらいに膨らんで蜂の巣のように空気穴ができ、酸味があればできあがりです。

 

 

肉まんの作り方

【材料】8個分

     

薄力粉200g     手作り天然酵母100g (ドライイースト3g、ベーキングパウダー5gでも可)

砂糖小さじ1      サラダ油小さじ1    スキムミルク大さじ1(牛乳100CCでも可)

ぬるま湯150CC

     

A 【豚バラブロック200g  長ねぎ5㎝  生姜一掛け(薄切り)  酒少々】  

B 【乾燥シイタケ2個(水に戻しみじん切り)  高菜炒め150g   生姜1かけすりおろし

みそ小さじ1   醤油小さじ1     ごま油少々】

【作り方】

      鍋にAを入れ、肉が浸るくらいの水を入れて茹でる。

 (八角かセロリをいれると本番の味に近い) 冷ました茹豚肉ブロックを1㎝ぐらいの

サイコロ大に切る。Bと一緒に混ぜ合わせる。

② 大きめなボールに薄力粉などの材料をいれ、ぬるま湯を少しずつ入れて混ぜる。

③ 生地がまとまったら、なめらかになるまでこねて20分程発酵させる。

④ 発酵させた生地の空気を抜き、空気を抜いた生地を8等分にして丸め、平らに延ばす。

 

⑤ 冷えた具を載せて包む。さらに10分程発酵させ、蒸し器で15分程蒸せば出来上がり。

そのDVはコロナのせい?             ~自粛要請下のDV、性暴力、子ども虐待~

2020年1128日、男女共同参画フォーラムあすばる2020の県民企画の助成を得て講演会を開きました。オンラインで北仲千里さん(NPO法人全国女性シェルターネット共同代表)にコロナ禍の女性への暴力について報告いただき、話し合いました。

 

*新型コロナウィルスと女性への暴力

コロナウィルス感染者が次々と報告され、外出自粛要請が取り沙汰され始めた今年3月末、「NPO法人全国女性シェルターネット」はいち早く、DVや虐待の増加が懸念されるとし、迅速な支援対応を求めて国へ要望書を提出した。4月になると国連も、女性への暴力被害の増加が危惧されると、各国に調査や対策を求める「影のパンデミック」声明を出した。

加害者と被害者が四六時中一緒にいる自粛生活下の家庭において、新型コロナウィルスがDVの原因であるかのような捉え方をされたが、支援者たちはそのように捉えていなかった。「災害や非常時にはDVや性暴力が増えるのは、『元々あった社会構造のゆがみが牙をむく』ため。阪神や東日本の大震災後に避難所や仮設住宅で数多くの性暴力やDVが報告された。疫病災害下でも同様なことが起こりうる」と考えていた。今回コロナ禍の実際の相談のなかで当事者の多くも「元々DV的なことはあった」と語っていた。突然暴力が始まったのではなく、支配的であったものがより増幅し深刻化した。外出自粛の環境は加害者にとっては監視がしやすくなり、被害者は家庭内に留まらざるを得ない状況に陥った。外部へ相談したり、助けを求めたりしにくくなった。

また、トラウマを抱えた当事者への生活回復支援事業として計画されていたセミナーが相次いで開けなくなったり、回復を目指していた当事者の体調が相次いで悪化したりしたとの報告もある。

 

*特別定額給付金とDV被害者

DVや子ども虐待のために避難して住所地に住んでいない被害者に対して、特別定額給付金が直接支給されるような救援策が予想外に迅速に進んだ。DVや子ども虐待だけでなく、高齢者虐待や障がい者虐待、その他の家庭内暴力により住所地に住んでいない当事者へも適用された。一方で、この給付金は世帯主が代表して申請するシステムだったため、世帯主である加害者が分け与えないと同居中の被害者が給付金を手にできないという事態になり、経済的、精神的DVを訴えるという悲痛な相談が相次いだ。これを機に夫のもとを去った被害者もいる。10年前に別居・離婚を経ても、いまだ安全のため住民票を移していないという当事者もあり、DVの与える影響について驚くべき実態が明らかになった。10年前の被害であっても給付金は支給された。

 

*世界の支援者たち

この間世界シェルターネットワークは、オンラインでセミナーを開催し、情報交換、リモート相談のノウハウ等を全世界で共有した。外出禁止令が出されたイタリアでは、「シェルタースタッフをエッセンシャルワーカーとして認めて、シェルターを閉じないで」という運動が起こったり、フランスでは被害者が薬局で秘密の合言葉を口にするだけで避難できるという、逃げ出しにくい被害者を救援する策が工夫されたりした。アメリカでは、電話相談や面談ができなくなる中、オンライン相談を始めたり、デジタル相談の手引きを作ったり、暴力の証拠を安全に保存できるアプリを開発し運用したりと、ITを駆使した支援を展開した。さらに、シンガポールでは劣悪な住環境で生活している移住労働者に感染者が多く見つかり、マイノリティーへの影響は甚大だったと報告された。

 

*これからの日本のDV被害者対策

民間支援団体の多くは、支援の入り口である相談から、支援計画、再出発、離婚・調停、その後の生活に至るまでの長い道のりを当事者に伴走する支援を行っている。DV相談をしたという証明を申請するためにも公的機関につなぐことが多いが、ここで多くの民間団体は支援から切り離されるということが起きている。複数の機関が関わるため担当が次々と替わってしまい、支援に切れ目ができる。DV被害者支援についての専門性を持たない担当者に当たると、2次被害を生むことも多数報告されている。このように、日本における支援では「切れ目のない支援」が課題となっている。

一方、世界ではDV、子ども虐待、性暴力、セクシュアルハラスメントやストーカー行為、人身売買などの「女性への暴力」に対するワンストップ支援センター型の支援システムを導入する国が増えている。専門のソーシャルワーカー以外に、警察、医療、弁護士、託児担当などが常駐し、危機介入、リスクアセスメント、セイフティープランの作成、精神的なサポート、警察への通報、シェルター利用、住宅や生活支援へとつなぐことができる。高齢者、障がい者であっても利用できる。最大のメリットは、当事者が様々な機関を「スタンプラリー」のように回らなくてもよいことや、同じ場所に異なる専門職種がいることで、情報や支援のあり方を共有でき支援計画を立てやすいことである。

欧州評議会で発効した「女性に対する暴力及びドメスティック・バイオレンスの防止、根絶に関する条約(イスタンブール条約)」は、DVだけでなく虐待、性暴力、ストーカー行為等のあらゆる女性への暴力被害者支援のための支援システムが包括的に示されている。被害者は専門職による支援を得る権利があるとされ、DV罪の創設、人口1万人に1か所のシェルター設置なども掲げている。

全国女性シェルターネットは9月に「私たちが目指す女性に対する暴力被害者支援」を発表し提言している。

 

国の今後の動きとして、DV防止法の改正に関して調査、検討が始まっている。DVの形態として軽く見られがちな「精神的DV」も保護命令の対象に入れる、今は野放しの加害者の更生を盛り込むなどの論点がある。厚生労働省では、売春防止法に基づいて設置された婦人相談所での支援に限界がきているとして、「困難を抱える女性への支援のあり方に関する検討会」が始まっている。「指導、更生」型から、当事者の人権を尊重した支援、専門職としての相談・支援員の配置、民間団体の位置づけなどが明確になるよう望んでいる。法務省では、刑法の改正から3年が経ち次の改正に向けて、「性犯罪に関する刑事法検討会」が始まっている。

 

後半の約1時間は質疑応答により、課題共有を深めていきました。質問はこれからの被害者支援に集中しました。

 

   SNS相談の導入が相次いでいることについて

SNSでもメール相談でも、支援者がその地域で支援することに意義がある。相談だけでは支援につながらない。面談につなげ支援に入るためのツールとして導入してほしい。全国一律でやっても相談員は相談者の地域の社会資源や支援の流れがわからない。相談支援に関わらないような業者に任せないことが必須。相談の後ろに支援システムが必要。

 

   相談・支援の専門性について

「相談」は話を聞くだけ、だれにもできると軽視されている。心理カウンセラーと混同される場合もある。相談員は専門知識、法律、関係する機関や担当者を知り連携できるソーシャルワーカーであり専門職といえる。資格を持ったうえでDVや虐待についての研修を200時間受講しないと支援に携わることができない国もあり、この職を目指す若い人も多い。今日本の大学でこの職を目指したいという学生がいても待遇、給与の面から勧められない。民間団体は雇用ではないボランティアベースが多く、活動自体をやめている団体も増えている。

国レベルで言えば、内閣府男女共同参画局が相談を担っている一方で、実際の支援は厚生労働省が所管する。地域により相談・支援のやり方が異なるのは、地域に運用が任されているからであり、国としての指針が地域には生かされていないのだろう。相談・支援そのもについての法律が必要だと思う。

 

「切れ目のない支援」を行うためには、ワンストップセンター式にするしかないのではないか。ワンストップセンター運営が民間委託であったり、シェルターやステップハウスは公的機関でなく民間が担う国もある。世界ではDVも子ども虐待も同じ機関で支援するところが多い。全ての職員がエキスパートになるのは無理だが、福祉、警察、医療、司法が同じところで働いていると、(厳格なルールに基づいて)当事者についての同じデータベースを利用し連携がしやすい。

 

参加者から多くの感想が寄せられました。

 

・新しい情報が沢山あり、とても勉強になりました。

・最新の動向を理解することができて大変参考になりました。精神的DV、経済的DVは、被害者も加害者も気づきにくく、なかなか相談に結びつきにくいことが課題です。小規模自治体では、経験豊かで関係機関とのつながりを持つ相談員の確保がなかなか難しく、経験のない担当職員はプレッシャーを感じていると思います。複数の自治体が広域で財源を確保し、民間機関と連携できればと思っています。そのためにも、今回のセミナーのような情報を近隣の自治体で共有する必要があると感じました。

DV被害者支援を取り巻く最新の情報や課題を知ることができ大変勉強になりました。“地域での支援”の充実が大切だとの言葉に励まされ、またここ福岡で頑張っていこうと思いました。

・海外でのDV被害者支援のあり方や今後のDV防止法の改正、新法成立への動きなど説明して頂き、理解できました。ワンストップ支援は、被害者にとっては、非常に大切だと思いました。

・震災後のDVとコロナ禍のDVとの比較やコメントや分析がもう少し欲しかったと思います。

 

・給付金の問題や、海外のDV対策と日本の対策との比較など、盛りだくさんの内容だった。実際の経験からのストーリーも多くあり、理解しやすかった。

 

さてこの講演会では、新型コロナウィルスが女性に対する暴力に与えた影響を切り口に、あらゆるタイプの暴力が分断されて支援されている日本の現状を共有できました。相談員は「専門職」だとするコメントがありましたが、当事者に共感をもちながら“伴走”する「当事者性を持つ専門職」と付け足したいと思います。なぜなら、ジェンダーという社会構造のゆがみを基に起きるDVは、女性なら誰もが被害者になりうるし、誰が相談者の席に座っていてもおかしくないからです。世界はDV、虐待、性暴力その他の暴力を包括的に捉えて「支援」しようという動きへ舵をとりつつあります。日本のやり方にもメリットがあるかもしれませんが、現状のままでは「ガラパゴス」(ガラパゴス諸島に失礼ですが)となってしまいかねません。

 

*講演会中に視聴した、被害当事者のラップ音楽「なぜかは彼に聞いて」は、次のYOUTUBEで視聴できます。

ネパール、タイのクラフト品紹介

AWCは、ネパールの障がい者施設の女性と子ども、タイ農村部の女性が手掛けた手工芸品を仕入れ、各地で催されるバザーイベントに出店し、展示紹介しています。多くの方々にご購入いただくことで、現地の皆さんへの生活支援の輪が拡がります。

今年の秋も例年のように出店する予定でしたが、コロナウイルス拡大の影響で軒並み中止となりました。イベントへの参加はできなくなりましたが、1024日アミカスで開催された講演会の会場ロビーで、販売の機会をいただきました。また11月上旬から、カフェ・アニパニの展示スペースを利用して、紹介販売を始めました。アニパニに足を運んでいただいた際に、お好みの一品を探してみてはいかがでしょうか。

タイ料理のお取り寄せいかがですか?

AWCの活動に長年協力してくれている、タイ出身のエーさん。これまで通訳や翻訳の仕事をメインに手掛けてこられましたが、コロナ禍で国際間の往来が途絶えたことで、自身の仕事も転機を迫られたそうです。そこで、自宅キッチンを改装してタイ料理のネット販売を始めることにしました。店名は「イム・アロイ by Khrua Chantima」(イム=お腹いっぱい、アロイ=美味しい チャンティマの台所)。

 

 エーさんは本業の傍ら、これまでも福岡市の国際交流イベント等でタイ料理の屋台を出店することもあり、行列ができるほどの人気を博すことも。コブミカンの葉(バイマクルート)やレモングラス(タクライ)等、こだわりのタイ原産ハーブを使った家庭的な優しい味付けです。外国旅行ができない今、本格的なタイ料理でタイの空気を感じてみてはどうでしょう。

 

エーさんの一番のお勧めは、チェンマイハーブソーセージ「サイウア」(5本入り1,500円税込)。9種類のハーブや香辛料が使用され、ビールにぴったりの香り高いソーセージです。口に運ぶとタイの裏路地の賑やかな市場の屋台に腰を下ろしているような気持ちにさせられます。

 

・サイグロクイサーン(タイ地方の東北ソーセージ) 約500 1,300

・ガイヤーン(タイ焼き鳥)タレ付き 1人前540

・ゲーンキョウワーン(グリーンカレー) 1人前650

・カオマンガイ(タイチキンライス)スープ付き 1人前750円(5人前以上に対応) 他

 

 

 送料は別途かかります。問い合わせ・注文はエーさん LINE ID: Chantima Harada 

☝カオマンガイ☝

福岡から留学生が発信するソーシャルビジネス “Revival”

日本語クラス高宮の日本語講師、村上和子さんの紹介を受け、1024日にアミカスで行われたイベントで、AWCメンバーと一緒に母国バングラデシュの女性のクラフト販売したタレックさんとフダさんカップル。12月にはギャラリーでクラフト展示とソーシャルビジネス「Revival」立ち上げのプレゼンテーションを行い、友人、九州大学大学院の教員、他NGO関係者などが集まりました。タレントの畳くんも駆けつけました。

 

お二人の故郷は、マイクロビジネスを広く普及させ、ノーベル平和賞を受賞したムハマド・ユヌスさんの出身地、南部のチッタゴン。ユヌスさんが示すビジョン「3つのゼロの世界;貧困0、失業0Co2排出0」を基に、日本・バングラデシュ両国のデザイン文化交流により持続可能なファッションプロジェクトとして、各地の見本市に出展していくとのこと。

 

「ノクシカタ」という手の込んだ母国伝統の刺しゅうは素晴らしく、刺し子やアイヌ刺しゅうにも似ていて、他に幾何学的な文様から花や動物のデザインもあります。ギャラリーでは、2頭の虎に立ち向かう女性を刺しゅうで描いた「タイガーマスク」が好評な売れ行きを見せたほか、大きな布全面に日本とバングラデシュそれぞれの細やかなデザインのノクシカタが並んでいました。

 

 

フダさんは在籍する大学院の他の院生とともに、村の女性たちが1枚の布を囲んで共同作業していくモチーフから、「Revival」のロゴのデザイン開発にも取り組みました。「村の女性と子どもの自立を目指すために様々な形で発信していく」と、フダさんは熱く意気込みを語りました。

講演会報告  内戦を逃れても~シリア難民女性と子どもにおきたこと~

 

 

2020年111日、AWCが福岡市アミカスで主催した講演会では、認定NPO法人「国境なき子供たち」(KnK)で、ヨルダン国内に避難したシリアの子どもたちへの教育支援を統括している松永晴子さんを迎えました。平和時にも女性と子どもへの暴力は後を絶ちませんが、紛争下や難民となった人たちには貧困の他、一層危険にさらされることを含め、現状を共有したいと考えたからです。講演の概要と参加者からの声を届けたいと思います。

 

 

 

内戦により国外に逃れたシリア難民は560万を超え、ヨルダンには2011年以来67万人余りが押し寄せました。UNHCRの難民キャンプに2割の人たちが、あとの8割はキャンプ外で生活しています。都市部には実はシリアだけでなく、イエメン、イラク、スーダンなどから逃れた難民もいますが、それぞれ出身国や避難の背景によって得られる支援に違いがあります。支援自体も縮小傾向にあり、第3国へ定住する人たちも減少しつつあります。シリアに帰国するにも難しい状況にあり、難民生活は長期化していると言えます。

 

女性は文化的にも習慣的にも外出する機会も働く機会も極端に少なく(キャンプ内の母子家庭率は28%)、親族以外との関わりが少ないため家庭内に虐待があっても外部へ助けを求めにくいと言います。

 

KnKは「子どもが子どもらしい生活を送れるよう」教育を受け、尊重され健やかに成長できる権利を保障したいと、キャンプ内外の学校で情操教育や日本で言う特別活動等の教育プログラムを展開しています。そして家庭訪問をしてプログラムの評価を行います。

 

あるとき、両親と娘2人のシリア難民家族を訪問しました。半地下の家を借りていますが、窓からヨルダンの子どもたちがごみを投げ入れるという嫌がらせを受けました。大声で怒鳴ると、今度はシリア人を揶揄する歌が聞こえてきました。家にじっとしているしかない女性と少女のストレスは想像に難くありません。過酷な労働、家賃は滞納しがちでただ我慢するしかないと言う父親、外でのストレスを家族にぶつけることがDVや虐待につながっている事が窺えます。松永さんは家族の表情から虐待やDVがあるかもしれないと感じ取ると、現地スタッフに照会シートを作成し当局と情報共有するよう依頼したとのことです。

一方、制限のある暮らしの中でも、子どもたちが描く将来や夢、家族への愛情、尊敬が作文を通して伝わってきました。学校をやめて働いている少年にも、松永さんは声をかけます。そして、過酷な状況下でも、女性たちがさまざまな不安要因から子どもたちを必死に守っているのです。

 

 

 

 

子どもが子どもらしく生活できるようにと願うのは遠く離れていても同じです。参加者からは、私たちにできることは、活動への応援と、関心を持ち続けること、今日の話を他の人にも伝えることだという声が寄せられ、会場で集められた募金23,650円を講師に託しました。

 

 

 

***参加者からの感想・コメント***

 

 

 

・現地で活動している方の話を直接聞くことができて本当によかった。松永さんの視線、女性や子どもたちに対する優しさ、温かいユーモアあるふれあいが感じられて、厳しい状況の中でもよりよい支援のあり方を考えさせられた。

 

・子どもたちの思いや行動は、世界中どこでも変わらないと思った。おしゃべりしたりけんかしたり。でも大きな違いは自由に未来を思い描けるのかどうかということ。

 

・世界の遠いところの出来事ではなく、私たちと地続きの問題だと思う。少しでも多くの人に関心を持ってもらうことは本当に大切なことではないだろうか。

 

・「教育はすぐに結果は見えない」と話されていたが、このような支援を続けて行くことで少しでも変化は必ずあると信じている。子どもたちに夢と希望を与えられると感じた。自分にできることをしていきたい。

移住女性をめぐって~出身国と日本での選択肢の違い~

 

22020年229日(土)、AWCでは上智大学総合グローバル学部の田中雅子教授を講師に迎え、学習会「移住女性の妊娠をめぐって~出身国と日本で選択肢の違い」を開きました。新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、国内各所でさまざまな事業が中止される中でしたが、田中先生から予定どおり実施できると連絡いただいたことで実現しました。会場のクローバープラザでは、キャンセルで空きのでた広い研修室に変更してもらい、参加者の席の間隔を広くとるなどして感染予防に配慮しました。

 

 

 

 少子高齢化で人口減少の止まない日本では、政府の舵取りで多くの外国人を受け入れるようになっており、在留外国人総数は20196月末で283万人、51%にあたる144万人が女性だ。これら移住女性の70%が生殖年齢相当(1549歳)で、100万人に及ぶ。彼女たちにとって、出身母国と日本とでは利用できる避妊や中絶の方法が大きく異なるため、SDGs(持続可能な開発目標)でも目標に掲げられる「セクシュアル/リプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)サービスへの保障」が大きく損なわれている現状が伝えられた。

 

 そもそも日本で認められている避妊法は世界に比べ極端に選択肢が少ないことが、資料から示された。国連機関等の統計からみると、「近代的避妊法」と呼ばれるホルモン剤注射、ホルモン剤インプラント等は世界中で広くとられているにも関わらず、これらは日本国内で認可されていない、または普及していないことがわかる。自国では避妊にあたって様々な選択ができた移住女性たちだが、日本に来てからは使い慣れたサービスを利用できなくなった結果、望まない妊娠のリスクを抱える現状に陥っている。

 

 また、日本では緊急避妊薬(アフターピル)の処方は性犯罪被害者に限定されており、容易に入手できない。オンライン診療化も検討されているが、日本語の不自由な移住女性はアクセスできない。

 

 避妊薬や避妊法にかかる費用の差も大きい。国によってはコンドームや経口避妊薬(ピル)を政府の保健所等で無料で手にでき、薬局でも数十円で売られている。緊急避妊薬も母国では薬局で180円程度なものが、日本となると処方箋が必要で115,000円以上かかる。そのため、一時帰国時に持ち帰ったり、友人や家族に送ってもらう人も多い。日本は人工中絶手術しか認められていないが、海外から持ち込んだ中絶薬、本来は医師の監督下に服用するのが安全だが、自己服薬して不完全な流産や出血を起こして病院に運ばれるケースも起きた。外国人であることから、日本で認可されていない薬を服用したことを医師に告げると自身の在留資格に影響するのではと不安に感じるため、対応する日本人の立場としては、移住女性当事者が安心して話せるよう相対する事が大切だと注意を促した。

 

 「避妊や中絶は誰がするものか」という意識の国際比較調査が紹介された。日本は『男性が主体(どちらかと言うと、も含む)』が7割である一方、隣国の韓国では『女性が主体(同)』の割合は日本よりも高く、欧米諸国では『女性が主体』が圧倒的に高い。調査対象ではなかったが、アジア各国でも避妊や中絶にあたっては女性が主体的に選ぶ方法の普及度が高い。これらの結果から、田中さんは「日本国内の女性の自己決定権の低さが、移住女性にも自己決定権を与えないことを強いている」と読み解いた。

 

 留学生らが日本で安全に生活できるよう、出身国と日本での避妊法の選択肢や中絶法が異なることを、日本に到着後に研修として組み込み、伝えていくことの大切さ提案した。

 

 また田中さんは「これは日本に暮らす150万人の外国人女性だけの話ではなく、日本社会が抱える問題をあぶり出している。日本人女性が選択肢の拡大を求めたり予防を積極的に関わっていったりする問題だ」と結ばれた。

 

報告「第4回世界女性シェルターネット会議IN台湾2019」

(報告①)

「彼は私という人間を見ないで、性器を求めていただけなのか」

ひとりの女性が声を上げた。交際相手からのレイプ。司法に訴えると、法廷という公の場ですさまじい二次被害にさらされた。ステージ上で演じたのは女優でなく、国際会議に参加したその女性自身だった。彼女の表現(アート)は、否応なく「私たち」の当事者性、サバイバーの部分を引きずり出していった。

「私たち」とは誰か? 社会学者で詩人のカムラ・バシン氏は4年前の答え「女性と少女、LGBT2Q+」に、「家父長制に居心地悪さを感じている男性」を包摂した。その理由を聞かれて「暴力の素地を生む家父長制。連帯しなければ打ち負かされてしまう」と力を込めた。

これは、1158日、台湾の高雄市で開かれた「第4回世界女性シェルター会議」のオープニングでのシーン。私は初めてこの世界女性シェルター会議に参加した。

会議は、アジア地域各国によるネットワーク「アジア・女性シェルターネットワーク(ANWS)」の事務局「The Garden of Hope FoundationGOH)」【台北市】が主催し、台湾政府、企業等の強力なバックアップにより開催された。女性への暴力、性虐待を根絶しようという切実な思いを胸に120ヶ国14000人、日本からも約100人が参加したと聞いている。スローガンは「ImpactSolidarity(衝撃・連帯)」。

台湾の総統・蔡英文氏もオープニングに駆けつけ、台湾が短期間に暴力被害者支援の法整備、支援制度を進めてきたこと、特にアジア初の同性婚合法化を実現し、運用がスタートしていることを強調した。

5つの全体会では、ダンス、証言、プロテストといったあらゆる形態を駆使して、女性への暴力とそれを生むジェンダーという認識の共有を表現した。女性への暴力被害者支援にはモニタリング機能が付いた包括的な世界基準の支援システムが必要だとして、欧州協議会のイスタンブール条約並みの国連議定書が望まれるとされた。世界女性シェルターネットワーク(WWSN、事務局;オランダ、ハーグ)は、世界各地の社会資源を調査し、被害者がどこにいても支援にアクセスできる(誰一人も取り残さない)ようウェブ上でつながる支援地図を作り上げようとしている。AWCも協力したい。

60の分科会では、世界各国における当事者支援のプログラムの提案、実践、課題といったより具体的な内容について議論を深めた。内容は、危機介入プログラム、シェルター運営、シェルター内プログラム、職業訓練、安全な面会交流プログラム、加害者家族との調整プログラム、家探しプロジェクト、オープンシェルターなど様々。

ある分科会ではイスラエルのアラブ女性専用シェルターの活動を紹介。ひとり親の自立が難しく大半は加害者家族のもとに戻ることを選択する。被害者と子どもたちは利用中に様々なアクティビティやプログラムを経験し、情報を得て力をつけていく。一方でソーシャルワーカーは家族と接触しより安全な帰宅の道をつけようとする。ユダヤ人社会ではマイノリティ、アラブのシェルタースタッフは「私は(ユダヤ人の)警察署長にも一歩も譲りません。」と闘いの日々に明け暮れる。

会場前のブースでは、活動紹介やグッズ販売が行われた。アフリカでの布ナプキンプロジェクトや、新宿の10代女性が利用できるピンクのバスTSUBOMI CAFÉが取り組みを紹介していた。

 

 

最終日には高雄市内外の関連機関を訪問する10コースのスタディーツアーが行われ、私は少女シェルターを見学した。期間中に写した膨大な写真は、どれを見てもとてもいい表情をしている。一堂に会した14000人に何かの魔法がかかったのかしら?

 

(報告②)

私は、台湾は日本よりDV防止対策に対して進んでいる国という印象を当初から持っていました。というのは、2001年に日本で「DV防止法」が施行された時にいろいろな国のDV防止のポスターを見る機会があったからです。暗い色調が多い中で、台湾のものは、全体が白を基調とし明るい物でした。画面中央に包帯か何かの白い布をまとった女性が大きく堂々と描かれており、それを力強く剥ぎ取っている写真で、非暴力を訴える女性の存在感を感じさせとても印象深いものでした。そして現在、台湾の国会で4割を女性議員が占め、今年5月には、アジアで初めて同性婚法を合法化させました。やはりあのポスターを作る時点で、台湾はすでに何か勢いを持っている国だったと思います。

会場では、あちらこちらから英語がとびかっていました。そのことで英語は世界共通語と改めて身を持って知った次第です。私は、全体会は同時通訳があったので理解できましたが、分科会は英語の通訳はなく、想像力を働かせながら、辛うじて過ごしました。

 「アートとアドボカシー」がテーマの全体会では、3人のパネリストが登場しました。最初のパネリストは女優の「ヤリッツァ・アパリシオ」さん。今年のアカデミー賞にノミネートされた映画「ROMA/ローマ」(ローマはメキシコの地名)で、主演女優賞を受賞し一躍脚光を浴びました。彼女はメキシコ先住民であり、先住民のアカデミー賞ノミネートは初めてという事です。彼女はメディアや映画界で、先住民の権利、国内の労働者の権利、男女の平等を訴えています。

二番目は、韓国の詩人のチェ・ヨミンさん。彼女は1994年に「三十、宴は終わった」という詩集で100万部近くの大ベストセラーを記録され、さらに韓国の#MeToo運動の火付け役となった人です。2017年には「怪物」という詩を発表しました。その中で常習的なセクハラをしている詩人を暴露し、「私だけでなく、彼によって苦しみを受けた多くの女性へ、怪物からのまともな謝罪、公式的な謝罪と反省を望む」と綴っています。彼とは、韓国を代表する民族的詩人であり、ノーベル賞受賞候補としても取り上げられていた詩人です。彼女は、「詩によって、広く深く伝わることができ、痛みのある過去からの解放、性暴力の被害者の心を癒すことができる」と言っています。このことでさらに韓国における#MeToo運動が拡大していきました。「#MeToo運動の核心は、性差別と性暴力でありもっと多くの言葉を出さなければならない。これは性差別的な社会を変えようとする偉大な革命でもあるのだから」とも述べています。

三番目はメキシコ出身のマルガリータ・ジレさん。彼女は1995年に、メキシコで初めて、シェルターを作った女性活動家です。とても明るく笑顔が絶えない方で、その他にも、ラジオやTVでの社会的なドキュメンタリーを制作しています。2006年にはインターアメリカンシェルターネットワーク国際的団体を、2008年には女性シェルターグローバルネットワーク等を創設しました。彼女は「『アート』は様々な人たちをアドボカシーできる。#MeTooでは、アートを通じて、小さな力を持つことができる。多くの苦痛はあるし、沈黙もある。声を出さない多くのセクハラがあったとしても、ひとりひとりが何をしたいのか、社会の何を変えていくのかを考える事の力になると思う」と言われています。彼女の映画は性暴力、人身売買、貧困、障がい者問題を抱えたメキシコの複数の女性たちが主人公で、暗く重いテーマでした。国、文化は違っていても、底を流れる通奏低音は同じものと感じました。目の前にいるマルガリータ監督はとても明るくよく笑っていました。この明るさはどこから来るのか。きっと彼女は直面した困難さを強く感じ、それを自分の物として感じ取り、乗り越え、前進あるのみと思うからでしょうか。

私は、アートと暴力との関係はどのようなものか見当もつきませんでした。しかし、アートは、表現者の個人的な物であるにもかかわらず大きな力になり多くの人々に精神的、感覚的影響を与え、特にすぐれたアートは、社会を変えていく事にまで繋がるという力を感じました。

 

全体会とは別に、私はここに報告しなければならない人がいます。それは、西アフリカで思春期を過ごし今はアメリカに住んでいる、社会学者の「ニナ・スマート」さんです。会場にはいろんな国からいくつかのブースが出ていました。あるブースで本を渡されて、執筆者が何者かわからないけれど、後で調べたら分かるだろうという軽い気持ちでサインをしてもらうために列に並びました。とてもパワフルな方で握手をする彼女の手から私にもその熱いパワーが伝わって来るようでした。帰国して調べると、彼女はアメリカの社会学者で「Wild Flower」という本の筆者。FGM(アフリカ等で行われている女性性器切除)をやめるための活動をしており、女性のエンパワメント、経済的自立、切除でなく教育に力を入れる事を仕事とされている方でした。世界では日本では考えられないようないろいろな性被害、虐待があることを知り、これらのことを遠くのことでなく、身近なものに思えるようになりました。今回、日本で色々な活動をされている方との出会いがあり、DV被害者支援もそれぞれの立ち位置で熱心にしている仲間が、世界中にいることを確認できました。足元を固めながらもグローバルな視点をも見据えながらこれからも地道な相談をしていきたいと思います。最後にAWCの皆さんの温かい支援のもとにこの大会に無事参加することができたことを心より感謝いたします。

 

 

「~性暴力ゼロのまちに~ 知っていますか?福岡県性暴力根絶条例」参加して

『Black Box』伊藤詩織著  文芸春秋
『Black Box』伊藤詩織著  文芸春秋

先日1027日にアミカスにて、BBCドキュメンタリー「日本の秘められた恥」視聴と、堤かなめさん&伊藤詩織さんの対談が行われました。

詩織さんは、ご自身が受けられた性暴力について実名とお顔を出して告白された方です。≪性暴力に遭われたこと≫ そして ≪そのことでその後の人生がすっかり変わったこと≫ どれほどの怖さ、苦しみ、辛さ、悲しみ、憎しみ、無力感を感じられたことでしょう。想像を絶するものだと思います。

何も悪いことをしていないのに、人としての権利を侵害されたという事実がありながら、「その場」に詩織さんと加害者しかいなかったことで2人にしかわからないと事実は「Black Box」と言われ、加害者の逮捕が決まったにもかかわらず直前に取り消され、事件は「不起訴相当」という結果となる。私にも悔しい思い、たくさんの怒りの感情が湧きました。

詩織さんが語られた中で、私にとって特に心に響いたものは次のような言葉でした。「こうするしかなかった。」「何か動きを起こせば波が起こる。良い波も悪い波も来るが、黙っているよりはずっといい。」「周りがどう判断しようと自分の真実はひとつでありそれを信じる。」

また、当日の質問者に対しての詩織さんの真摯な対応にも感動を覚えました。≪無理解、無関心の人々や傍観者が、理解者、支援者へと変わる≫ その変化を促すうねりのようなものを感じながら私は詩織さんの言葉に聴きいっていました。

 当日は、堤かなめさんから県条例についての報告などもあり、福岡の斬新な動きに明るい未来を感じました。

小さなことを積み重ねることによって、一人の力がたくさんの人の大きな力となり、良い方向へ変わりつつあることを実感して私自身も勇気と力をいただいた時間となりました。

 

 

今回のドキュメンタリーの視聴と詩織さんのお話は先日のナディアさんの映画に通じるものも多く感じ、私自身もエンパワメントされ、「私は何ができる?」と問い直し、私の小さな力も大きな力の一部分となることを自覚することに繋がりました。

 

 

リレーエッセイ

100万回生きたねこ」の作者佐野洋子さん。作品の中から、いくつかをご紹介します。

〈愛することの意味を知る一冊!〉

 

『四歳位の時、手をつなごうと思って母さんの手に入れた瞬間、チッと舌打ちをして私の手を振り払った。...。その時から私と母さんのきつい関係が始まった。』

 

(シズコさん)は、家庭訪問で、洋子さんの担任に「女どうしということで、嫉妬なのかもしれません」と語る。障がいを持ったきょうだいを妹に押し付け、「学歴詐称」する母親を厭い、洋子さんは大学進学を機に親元を離れる。後々、老いた母を引き取り、同居したり施設に預けたりしながら母と向き合っていく。ある日、ふとしたきっかけで母の布団に入り込み、「何十年も私の中で凝り固まっていた嫌悪感が、氷山にお湯をぶっかけたようにとけて」いく体験をする。

ご相談される方は、様々な問題を抱えておられ、その中には家族の関係に悩む方もいる。そんなお話と重なる。

『この小さな生き物の、生き物の宿命である死をそのまま受け入れている目にひるんだ。その静寂の目に恥じた。...。私はフネのように死にたいと思った。』
                           「フツーに死ぬより」

 

「神も仏もありませぬ」は数あるエッセー集の中の1冊。『フツーに死ぬ』は、飼っている猫フネが癌で死ぬまで。「人間は月まで出かけることができても、フネのようには死ねない。月まで出かけるから死ねない」とある。洋子さんは「フツー」ということばに何をこめたかったのだろう。


『金で買う』は近所に住むアライさんとの事。アライさんは農業を営み、洋子さんはアライさんから度々貰い物をする。トマトやピーマン、夏ハゼの実・・。「百姓は難しいもんだ。五十年百姓しても五十回しか経験はできねェんだよ」という言葉にショックを受け、「私は失敗したら、ただちに書き直し、何千枚もの絵をかきちらした」という。アライさんからの戴きものを「うめーの」とたらふく食らう洋子さん。かたちあるもの、かたちなきもの、それぞれの本質をまっすぐな目で見詰める姿が伝わってくる。

 

その他にも、思わずくすっと笑ったり、うんうんとうなずいたり、身体の深いところからわらわらと力が湧いてくる。

 

 

「外国人労働者」問題を考える学習会に参加して

 

 2019年714日(日)、AWCも参加している「移住労働者と共に生きるネットワーク・九州」等の主催で開かれた、学習会「急増する外国人労働者と多文化共生を考える福岡集会~どうなってんの?もう移民社会?労働者を労働者として~」に参加した。講師は「移住労働者と連帯する全国ネットワーク」代表理事の鳥井一平さん。バブル景気を背景に日本が外国人労働者を迎え入れた頃から現在までの約30年間、外国人労働者の権利支援活動に携わってきた。外国人技能実習制度を拡大させて十分な準備もないまま外国人労働者受け入れ急ぐ国の拙速な対応、現場に生じる人権侵害、権利侵害の根底にあるもの、今後の課題等、自身の支援経験や政府との交渉等から見えてきたことを多岐にわたって語られた。1時間40分余の講話は息をつく間もないほどのスピード感だったが、会場の大名教会(福岡市中央区)に集まった80人の参加者と一緒に聞き入った。

 

 

 

 外国人研修制度は、開発途上国の人材育成を目的に1990年に在留資格「研修」を使って始まった。3年後に、より実践的な技能、知識の技術移転のために、『技能実習制度』が創設された。1993年は、国内に超過滞在者(オーバーステイ)が298千人で最多となった時期とも重なる。鳥井さんらはこの年に“外国人春闘”も始めた。解雇や労災等、在留資格の問題から現場で最も立場の弱い外国人労働者の権利擁護を社会に訴えた。一方で国は、「不法滞在は犯罪の温床」と治安悪化への不安を訴え、不法滞在者半減キャンペーンを行った。それまで超過滞在であっても町工場を支え、滞在を容認されていた外国人労働者は、国の都合で姿を消していった。鳥井さんは「不法就労が犯罪の温床になるなどどこにもデータはなく、研究者も首をかしげる。超過滞在者による犯罪発生率はむしろ日本人より低い。出稼ぎに来ているので捕まったら元も子もない。できるだけ目立たないよう暮らす」とも語った。

 

 法務省のデータによると、201812月の技能実習生数は328360人で前年比19.7%増。国籍では、ベトナム、中国、フィリピン、インドネシア、タイが上位5か国。分布は変わっても、制度開始以来この上位5か国は変わらない。性別では男女比が2001年頃から逆転し、女性が男性の数を上回った。「食品」「縫製」の職種に就く女性が増えたことと合わせ、多くが男性である社長が現地に出向き、「この子」と指名して実習生を選ぶことも影響しており、このような人選方法も「人身売買的」と指摘した。受け入れているのは従業員数50人未満の企業が全体の76.7%で、中でも体力のない零細企業の割合が高い。そのため賃金はほぼ最低賃金。そのような制度、環境の下で、人権侵害が起きている。

 

 技能実習生の人権侵害は“奴隷労働”“人身売買”とも呼ばれ、それを具体的に示す事柄として『時給300円』『強制帰国』がある。「技能実習生への支給予定賃金(基本給)別構成比」(JITCO国際研修協力機構)によると、10万~14万円がほとんどだが支払賃金そのものが公表されたことはない。

 

 実際に鳥井さんらに寄せられた相談からは、国が公表するデータからは見えない現実が浮かぶ。一か月の残業時間が230時間(法定労働時間は174時間)、基本給は時給250円で所定時間外賃金の時給300円だった。これは、縫製工場で働く中国人の若い女性たちの給与明細だ。地方の工場で働く別の実習生の賃金台帳では、三人共同生活ながら家賃は一人55千円、水光熱費の他に、布団や家具、家電品等、一つ一つに月のリース代が課せられる。リース主は社長だという。ある大手自動車会社の構内孫請けの縫製現場では、女性の技能実習生のトイレ使用時間や回数をチェックし、1150円課金していた。

 

本国の送り出し機関に預けた50万~100万円の『保証金』も実習生を苦しめる。本国で借金して準備する金だ。問題なく35年の実習期間を終えて帰国できれば返還されるが、トラブル等で途中帰国した場合には没収される。実習中の権利侵害などに対し、改善を申し出たりすることで見せしめに強制的に帰国を迫られる。ある日突然車に押し込められて、空港に連れて行かれるというのだ。

 

不正行為にあふれる現場から逃げようと寮を飛び出し、大けがを負った実習生もいた。また、クリーニング工場のプレス機械で手を挟み大やけどを負いながら、労災隠しのために救急車を呼ばれなかった実習生もいた。建設現場のカンボジア人の実習生は、ヘルメットの上から毎日ハンマーで殴られ暴言を受けて心の病気になった。

 

これらの事案に対し、鳥井さんらは必要に応じて自身の団体や労働組合の仲間、労働局、労働基準監督局、行政に支援を得ながら調査をし、時にはシェルターで実習生の身の安全を確保して会社側と交渉にあたり問題解決を目指すという。

 

残念ながら、これらを人身売買、奴隷労働だと指摘するのは国内の公的機関ではなく、アメリカや国連などの海外から。アメリカ国務省人身売買年次報告書で2007年に初めて、外国人技能実習制度が人身売買にあたると問題提起されたのをはじめ、国連人権規約員会等からも勧告を受けている、

 

なぜこんなことが起きるのか。政府は「制度を理解しない、一部が起こしていること」と釈明するが、鳥井さんは「一部が起こしていることであれば、問題はとっくに解決しているはず」と否定する。

 

技能実習制度は、実習生と日本の受入れ企業だけでなく、現地の送り出し機関や送り出し会社、日本の監理団体などが複雑に関係する構造になっており、それぞれに多くの契約が存在する。これらの契約が実習生をがんじがらめにする。契約の中には日本人と付き合ってはいけない、労働組合に入ってはいけない、恋愛禁止、妊娠禁止…などが書かれている。本来は悪意のなかった社長(実習生の雇用主)は、制度を利用する中で、実習生を管理し“ピンハネ”し搾取するようになっていく。感覚が麻痺し、自身の人権侵害に抵抗がなくなる、というのだ。労使対等の原則が担保されないのが技能実習制度の本質で、このような制度そのものを私たちは利用してはならない、と鳥井さんは強く訴える。

 

いよいよ人口減少化社会に入り、2000年代には政府も労働力不足の解決のために外国人労働者問題を真剣に考え始めた。自民党の国家戦略本部も外国人労働者短期就労制度の創設を言い始めた時期もあった。技能実習制度は国際貢献だが、それとは違う労働者の受入れ制度の提案をした。ところがリーマンショックや政権交代などを経て、動きが止まった。それどころか現政権になると“移民”という言葉は禁止され、代わりに技能実習生のことを“外国人材”という言葉に置き換えてごまかし、制度の拡大を進めていった。そして、今年4月の入管法改定で特定技能1号、2号が始まった。

 

国内の外国人労働者は146万人、うち純粋に労働者としての在留資格で入国しているのは19%。8割以上の外国人労働者は、実は技能実習生や留学生、難民申請者(特定活動)などの人たち。労働者を別の形で日本に入国させ、働かせる。“偽装”をして迎え入れているのは、まぎれもなく私たち日本社会の方だ。このようは構造をそのままにしておいては、民主主義世界を壊してしまう、と鳥井さんは力を込める。

 

 人は労働力だけを使うわけではなく、生活がある。多民族多文化共生社会を形づくるという視点も政府には感じられない。使い捨てではなく、労働者を労働者として、社会の担い手として迎え共に社会を作るという考え方が必要。今のこの機会、まっとうな移民政策を考えていくことは、日本社会の民主主義をさらに一歩進め、深めていくチャンスなのかもしれない、と結ばれた。

 

フラワーデモに 参加してみませんか

 

今年3月に、性暴力事件に関する無罪判決が全国で相次いだ。性暴力事件をめぐる被害者の立場を理解しない司法や社会に対し抗議する動きが全国に拡がっている。理不尽な性暴力被害にあい怒りや悲しみを抱える人たちの、その思いに寄り添う気持ちを『花』に託し、参加者一人ひとりが花を手に集まる「フラワーデモ」は、私たちの街・福岡でも毎月1119時~、福岡市中央区天神の警固公園で開かれている。

 

 

 

4.11東京駅からまっすぐのびる行幸通りで花を持って集まろう。声をあげた性暴力被害者へ、声をあげられない被害者へ、そして私たちは性暴力を許さないという声を上げ続ける、そのために共にいる#WithYou の思いを込めた花を、それぞれが身につけることだけを決めて集まりました。

 

その呼びかけに約400人〜500人が集まりました。多くは女性たちでした。

 

風の強い寒い日でしたが、予定されたスピーカーが話し終え1時間経った後も誰も帰ることができず、次々に「私も話します」とマイクを持ち語りはじめました。

 

 

 

ここから。もう黙るのはいやだ。黙ることでなかったことにされるのはもういやだ。合意のない性交が罪にならない社会は嫌だ。そのために何ができるか。まずは話し合おう、考えよう、痛みをわかちあいながら。

 

 

 

未来を変えていくための、社会を変えていくための、性暴力を許さない声をあげるためのフラワーデモです。                    (フラワーデモ・ウェブサイトより)

 

 

 

 

 

“フラワーデモ福岡”に参加して

 

今年の4月から福岡でも性暴力に対する「フラワーデモ」が毎月11日に行なわれています。参加して感じるのは、…勇気をもって被害を訴え、裁判になっても加害者が無罪になる。性被害がなかったことにされている…ということです。74年前、太平洋戦争直後、中国大陸、朝鮮半島から引き揚げてくる途上で性暴力被害を受け、妊娠した女性たちが博多港からトラックで二日市に連れて来られました。二日市保養所で女性たちの堕胎手術が秘密裡に行われました。女性たちを救ったとして医師達を讃える碑が建てられています。女性たちは堕胎手術を受けて故郷に帰りました。この過酷な体験をなかったこととして、その後、穏やかに暮らすことができたのでしょうか?

 

フラワーデモで、マイクを握って語る女性たちの辛い思いは、70年前と同じではないか。守られない者たちの立場は今も変わっていないのです。セクシュアルハラスメント、性暴力が犯罪と認められていない状態、これを許す日本社会でいいのでしょうか?

 車内で、職場で、家庭内で・・・セクハラを受けながら無い事にしてきた私たち、MeToo!  WithYou!  と連帯して声を挙げていきましょう! 

ナディアの誓いは、私たちの誓い

 

014年夏、IS(イスラム過激派組織)がイラク北部シンジャールに攻撃をかけ、ヤジディの人たちが炎天下の中、彼らが聖地とする山に逃げ、食糧も水も薬もない状態に置かれているという報道があるまで、世界の多くはヤジディとその少数宗教について知らなかった。シンジャールから程近い村で、大家族に囲まれて育ったナディアは、将来美容室を開くことを夢見る少女だった。ISに村のほとんどの男性と高齢者を殺され、少女たちとともに捕えられ、性奴隷としてISメンバーに売買される。

 

 

一瞬の隙をみて逃げ出した彼女は、難民キャンプを経てドイツへ逃れた。そして性暴力の被害者は私を最後の犠牲者にしてほしいと人身売買をなくすことを各方面で訴えると共に、土地も生活基盤も失ったマイノリティー難民の自立への理解を求め活動を行っている。自らの体験を本「私を最後にするために」にし、その活動はドキュメンタリー映画「ナディアの誓い」になった。国連親善大使になりノーベル賞を受賞するが、その表情に喜びの色はない。「人々は私に何が起きたかばかり聞きたがる。自分を含め多くの女性や少女をレイプした加害者の責任は誰一人として追及されていない」ことの理不尽さを悲痛な面持ちで語る。いつも鏡を見ながらメイクやヘアスタイルを研究していた少女は、捕らわれてから自身を穢れたと感じ一切鏡を見ることができなくなる。自らの存在・人権を踏みにじる性虐待が決して許されない理由がここにある。

 

 

世界の遠くであったことは日本と関係ないだろうか?戦時下の性暴力と性奴隷について、70年以上を経ても日本は被害者に対して心からの謝罪と償いをしないどころか、なかったことにしようとする人たちがたくさんいる。これ以上歴史を繰り返さないよう、読んでから観るか?観てから読むか?ヤジディってよくわからないという方は、読んでから観ることをお勧めします。

 

報告「外国につながる女性と子どもへの支援」

 

 20181124日(土)、あすばる男女共同参画フォーラム2018で助成を得て、AWCは講演会「外国につながる女性と子どもの支援」を開いた。講師には、関東圏を中心に外国人女性やその子どもたちを支援する民間グループ「ウェラワリー」から、事務局でコーディネーターを務める福島百合子さんを迎えた。クローバープラザ(春日市)を会場に、この日は様々な団体の講演会やセミナーが開かれる「あすばるフォーラム」だが、AWC企画の会場には、公的機関や民間グループで外国人支援に取り組む人たちやテーマに関心のある市民の方々ら、47人が参加した。中には外国出身の女性たちの姿もあった。

 

 最初に福島さんの自己紹介もかねて、1990年前後、自身が支援に携わったタイ人を中心とする人身売買事件やDV被害者支援について、当時の時代背景も含めて説明された。当時は人身売買への支援体制も整っておらず、公的機関が外国人被害者を受け入れた経験がないという状況の中、福島さんらは民間シェルターを立ち上げ多くの外国人女性を受け入れたことを紹介された。また、統計をもとに、日本で暮らす外国人の国籍や性別、国際結婚の傾向など、推移を見ながら解説され、参加者は定住する外国人を既に多く抱える日本社会の現状を理解した。また定住外国人を男女比で見た場合、中国、韓国、フィリピン、タイのように女性の割合が高い国の人たちは、“女性役割”を期待されて来日しており、妻やホステス、介護、性産業に就く人が多く、相談に訪れる女性たちとの国籍とも重なることも統計から読み解いた。

 

 日本人と外国人の夫婦の場合、二国間の経済力の差を家の中に持ち込む傾向があり、「家族はプライベートではなく、社会背景を明らかに背負って存在する」と指摘し、DVの生じやすい国際カップルの背景について解説された。全国の婦人相談所に保護された女性のうち、総人口比でみると日本人女性より外国人女性の方が約5倍多いという統計も示され、このような外国人女性の立場について相談員は知識として理解しておく大切さが語られた。

 

 また外国人女性支援において、日本に定着した外国人女性の多くはDVや離婚などの困難を抱えても自国に帰る選択肢はないことや、国によっては自国の親族への大きな責任を負って仕送りをしなければならないことにも相談員として理解が必要とされた。

 

 「ウェラワリー」は、2011年にタイ人女性らが立ち上げた小さなグループ。時間を意味するタイ語「ウェラー」、せせらぎが意味の「ワリー」。タイ語、中国語、ポルトガル語、タガログ語など支援員が担うのは9か国語で、さらに2か国語に対応する協力者がいる。通訳のできるレベルの支援員が、依頼に応じて公的機関や法律相談、家庭裁判所への同行支援や同行通訳を行っており、2017年度は277件に対応したという。

 

ウェラワリーでは、フリーダイヤルで多様な相談に対応している「よりそいホットライン」の外国語専門ラインの一部を担当。よりそいホットラインの相談を通じて同行支援が必要だと判断されたケースに出向いたり、行政からの依頼を受けて相談現場に通訳として同席するという。当事者の女性は、同行支援を受けた後にも再び「よりそいホットライン」などを通じて相談を繰り返すことで、継続してウェラワリーにつながり支援を受けることができる。

 

外国人女性はDV被害や離婚問題に直面しても支援情報がなく、「我慢するしかない」と思い込まされ、相談窓口にたどり着いたとしても事情を理解してもらえず諦める現状も紹介された。この問題を克服する方法としてウェラワリーでは同行支援・通訳支援に取り組む。ウェラワリーの支援員は関係機関に同行すると、当事者側の支援者としてではなく中立な立場で通訳に入る。中立な立場で当事者女性と関係機関をつなぐことが、結果的には当事者女性が支援を受けて自立できる助けとなる、という。通訳の際には支援情報や社会資源を当事者女性に理解がしやすく言い換えたり、また行政担当者には外国人女性の置かれた立場や背景が伝わりやすいよう工夫を重ねたりしながら通訳にあたっている。

 

最近では新しい同行先として、年金事務所が増えてきた。1990年頃に来日した人たちは60代を迎え、年の離れた日本人夫に先立たれることで年金や相続の問題も生じてきている。

 

国内の労働力不足を補うため、政府は過去にない規模の外国人受け入れを表明しているが。一方で、受け入れを想定している働く若い世代の外国人は、家族を作ったり子どもを産み育てたりする年齢層と重なることにも言及。福島さんは相談現場の実感として、これら新しい家族の問題に政府は将来的ビジョンを何も示さず、制度設計が不十分で今後が不安とも訴えた。

 

 

 

***参加者の感想から***

 

社会の国際化が進む中で、行政では相談や支援体制がまったくといっていい程遅れている。講演を通じて、現状や問題を正しく捉え理解する必要性を痛感した。支援のつながり、連携の中で今後の業務に、また社会の一員としての考え方に活かしていきたい。

 

 

 

***おわりに***

 

 小さなグループで外国人女性の問題に向き合うウェラワリーの取り組みには、AWCの活動に通じることも多いと感じました。福島さんたちが目指すジェンダー平等の視点における外国人支援、支援の留意点、財政も含めた民間団体としての組織運営は、AWCの活動を今一度振り返る機会となり、同時に課題克服のヒントもいただきました。

 

 また、外国人材の受入れ拡大への関心が高まるこの時期に、今後も否応なく増えていく外国人地域住民をどう迎え、共生していくかは大きな課題ですが、支援から取りこぼされやすい彼ら彼女らの立場を理解し、一緒に支える方法を参加者の皆さんと共有できたことは、とても意義があると感じました。

 

教育費サポートブック <2018年版>

子どもの高校、専門学校、大学への進学は、子育て中の親にとってはうれしい半分、経済的に不安がつきまとうものです。どれくらいかかるの?どう準備すればいいの?どんな支援があるの?奨学金って?様々な疑問に答えるために、「NPO法人しんぐるまざーずふぉーらむ」が作った一冊です。 これまでも渦中の女性からはたびたび相談を受け、情報提供や同行支援してきましたが、今回フォローアップ事業として支援に関わった子育て中のひとり親女性に、フードドライブの食べ物と一緒に届けました。

パープルリボンをつけよう

 

パープルリボンは女性への暴力を失くしたいと言う思いから、1994年アメリカ、ニューハンプシャーのベルリンという町で、性暴力の被害を受けた人々による集まりから始まりました。パープルリボンをつける事で、多くの人にこの問題の深刻さを伝え、関心を持ってもらい、暴力が絶対にあってはならない事を周囲に広げていくことを目指しています。

 

アジア女性センターは、被害者女性支援を行いながら、2001年にパープルリボンプロジェクトをスタートさせ、女性への暴力の根絶を求め続けて今までに至り、販売も手掛けております。 

 

1112()から25()までの2週間は、女性に対する暴力をなくす運動週間です。私自身もパープルリボン知ったのは、AWCと出会ってからでした。

 

皆さまも、是非この機会にリボンをつけて、身近な人にもご紹介ください。ご購入希望の方はAWCまでお問い合わせください。

 

難 民 を 知 る 一 冊

 

ターメリック、コリアンダー、クミン…遠い国の香りがするこれらの香辛料、みなさんにはどのくらい馴染みがあるだろうか。難民支援協会が出版した『海を渡った故郷の味』という本がある。迫害を逃れて日本にたどり着いた難民の人たちが、故郷の味を思い出しながら寄せたレシピが、美しい写真と味の思い出とともにつづられている。

 

 

 関東の大都市周辺を中心に増えている難民申請者に対し、地方での受け入れや支援に理解を拡げようと、数年前に難民支援協会(難民を支援する日本のNPO団体)の職員の方がAWCを訪問された。平和で安全だと思ってやってきた日本での厳しい現実を必死に生きる難民申請者や、人道的な立場から公的制度の枠組みを越えて工夫を重ねて支援をしている官民の人たちのあり方に胸を打たれた。この本は、その折に紹介された一冊だ。

 

 

 「故郷にいる母から、時々母のドレスを送ってもらいます。『洗わずに送って』と必ず伝えます。それは、服に残った母の匂いから、母のこと、故郷のことを思い出すことが出来るから」という難民の方の話も紹介されている。

 

 誰にとっても、“食べること”は生活そのものだろう。誰かが作ってくれた料理、味、におい、食卓を囲んだ温かい思い出…。平和な国に生まれた私たちとは、国情が大きく異なる難民の人たちだが、この本を手にすると同じ時代の同じ世界を生きる人たちであることをより肌感覚で知る。多くの人たちにお勧めしたい一冊だ。