◆◆◆ 外国人労働者と多文化共生を考える福岡集会 ◆◆◆

 

2019年4月の入管法改正により、さらに多くの外国人労働者が招へいされようとしています。彼ら抜きには日本の産業は成り立たないともいわれています。一方私たちは、国籍、民族や文化を超えて手を携えるような社会になっているでしょうか?労働者がいるのではなく、人権を持った「ひと」が住んでいるのです。外国人の生活者としての受け入れ現状と課題について、一緒に考えましょう。

 

*とき         2019714日(日)14001630

 

*ところ      カトリック大名町教会 (福岡市中央区大名2-7-7

 

*講師 鳥井一平さん(移住労働者と連帯する全国ネットワーク代表理事) 

 

*主催 移住労働者とともに生きるネットワーク・九州事務局

 

*参加費      一般600円、学生400円(資料代) 

 

*申し込みメール⇒ネットワーク・九州事務局:netkyusyu@gmail.com

 

報告「外国につながる女性と子どもへの支援」

 

 20181124日(土)、あすばる男女共同参画フォーラム2018で助成を得て、AWCは講演会「外国につながる女性と子どもの支援」を開いた。講師には、関東圏を中心に外国人女性やその子どもたちを支援する民間グループ「ウェラワリー」から、事務局でコーディネーターを務める福島百合子さんを迎えた。クローバープラザ(春日市)を会場に、この日は様々な団体の講演会やセミナーが開かれる「あすばるフォーラム」だが、AWC企画の会場には、公的機関や民間グループで外国人支援に取り組む人たちやテーマに関心のある市民の方々ら、47人が参加した。中には外国出身の女性たちの姿もあった。

 

 最初に福島さんの自己紹介もかねて、1990年前後、自身が支援に携わったタイ人を中心とする人身売買事件やDV被害者支援について、当時の時代背景も含めて説明された。当時は人身売買への支援体制も整っておらず、公的機関が外国人被害者を受け入れた経験がないという状況の中、福島さんらは民間シェルターを立ち上げ多くの外国人女性を受け入れたことを紹介された。また、統計をもとに、日本で暮らす外国人の国籍や性別、国際結婚の傾向など、推移を見ながら解説され、参加者は定住する外国人を既に多く抱える日本社会の現状を理解した。また定住外国人を男女比で見た場合、中国、韓国、フィリピン、タイのように女性の割合が高い国の人たちは、“女性役割”を期待されて来日しており、妻やホステス、介護、性産業に就く人が多く、相談に訪れる女性たちとの国籍とも重なることも統計から読み解いた。

 

 日本人と外国人の夫婦の場合、二国間の経済力の差を家の中に持ち込む傾向があり、「家族はプライベートではなく、社会背景を明らかに背負って存在する」と指摘し、DVの生じやすい国際カップルの背景について解説された。全国の婦人相談所に保護された女性のうち、総人口比でみると日本人女性より外国人女性の方が約5倍多いという統計も示され、このような外国人女性の立場について相談員は知識として理解しておく大切さが語られた。

 

 また外国人女性支援において、日本に定着した外国人女性の多くはDVや離婚などの困難を抱えても自国に帰る選択肢はないことや、国によっては自国の親族への大きな責任を負って仕送りをしなければならないことにも相談員として理解が必要とされた。

 

 「ウェラワリー」は、2011年にタイ人女性らが立ち上げた小さなグループ。時間を意味するタイ語「ウェラー」、せせらぎが意味の「ワリー」。タイ語、中国語、ポルトガル語、タガログ語など支援員が担うのは9か国語で、さらに2か国語に対応する協力者がいる。通訳のできるレベルの支援員が、依頼に応じて公的機関や法律相談、家庭裁判所への同行支援や同行通訳を行っており、2017年度は277件に対応したという。

 

ウェラワリーでは、フリーダイヤルで多様な相談に対応している「よりそいホットライン」の外国語専門ラインの一部を担当。よりそいホットラインの相談を通じて同行支援が必要だと判断されたケースに出向いたり、行政からの依頼を受けて相談現場に通訳として同席するという。当事者の女性は、同行支援を受けた後にも再び「よりそいホットライン」などを通じて相談を繰り返すことで、継続してウェラワリーにつながり支援を受けることができる。

 

外国人女性はDV被害や離婚問題に直面しても支援情報がなく、「我慢するしかない」と思い込まされ、相談窓口にたどり着いたとしても事情を理解してもらえず諦める現状も紹介された。この問題を克服する方法としてウェラワリーでは同行支援・通訳支援に取り組む。ウェラワリーの支援員は関係機関に同行すると、当事者側の支援者としてではなく中立な立場で通訳に入る。中立な立場で当事者女性と関係機関をつなぐことが、結果的には当事者女性が支援を受けて自立できる助けとなる、という。通訳の際には支援情報や社会資源を当事者女性に理解がしやすく言い換えたり、また行政担当者には外国人女性の置かれた立場や背景が伝わりやすいよう工夫を重ねたりしながら通訳にあたっている。

 

最近では新しい同行先として、年金事務所が増えてきた。1990年頃に来日した人たちは60代を迎え、年の離れた日本人夫に先立たれることで年金や相続の問題も生じてきている。

 

国内の労働力不足を補うため、政府は過去にない規模の外国人受け入れを表明しているが。一方で、受け入れを想定している働く若い世代の外国人は、家族を作ったり子どもを産み育てたりする年齢層と重なることにも言及。福島さんは相談現場の実感として、これら新しい家族の問題に政府は将来的ビジョンを何も示さず、制度設計が不十分で今後が不安とも訴えた。

 

 

 

***参加者の感想から***

 

社会の国際化が進む中で、行政では相談や支援体制がまったくといっていい程遅れている。講演を通じて、現状や問題を正しく捉え理解する必要性を痛感した。支援のつながり、連携の中で今後の業務に、また社会の一員としての考え方に活かしていきたい。

 

 

 

***おわりに***

 

 小さなグループで外国人女性の問題に向き合うウェラワリーの取り組みには、AWCの活動に通じることも多いと感じました。福島さんたちが目指すジェンダー平等の視点における外国人支援、支援の留意点、財政も含めた民間団体としての組織運営は、AWCの活動を今一度振り返る機会となり、同時に課題克服のヒントもいただきました。

 

 また、外国人材の受入れ拡大への関心が高まるこの時期に、今後も否応なく増えていく外国人地域住民をどう迎え、共生していくかは大きな課題ですが、支援から取りこぼされやすい彼ら彼女らの立場を理解し、一緒に支える方法を参加者の皆さんと共有できたことは、とても意義があると感じました。

 

第21回全国女性シェルターネットシンポジウムに参加して

 

2018112日(金)から4日まで開催されたシンポジウムに参加した。支援者も当事者も集ったシンポジウムを振り返る。

 

 

 

1)私たちには目標ができた

 

基調講演、シンポジウム、分科会を通して、暴力を受けた女性への支援理念を問い直す時間となった。報告者も参加者も、相談件数の増加に対してDV防止法に基づく一時保護件数の減少を語り、被害当事者支援の“劣化”を指摘した。シェルターにおける支援理念と安全対策について、オーストリアのDVセンターで日々当事者支援を行っているローザ・ローガーさんは語った。「リスクは伴うが、自由も大切。当事者とルールについて話し合うことで、“制限”を再評価していく機会になる。この時間を惜しまないでほしい。シェルターは民主主義が大切。安全の名のもとに制限を強くしすぎることによって、その人らしさを奪うことにもなりかねない」と警鐘を鳴らした。「その人らしさを奪う」のはDVの本質でもある。

 

2015年に欧州評議会により「女性に対する暴力およびドメスティック・バイオレンスの防止およびこれとの闘いに関する条約」(イスタンブール条約)が採択された。ローザさんは、起草に関わり、採択後は批准各国での条約の監視に携わっている。

 

まず、共有されたこの条約を理解し、広めていこう。条約の批准に向けてアクションを起こそう。参加者それぞれが全国に散って、国や自治体が策定する男女共同参画行動計画に反映していこう。

 

配布資料と報告によってイスタンブール条約をまとめてみた。

 

 

 

イスタンブール条約とは?

 

 

 

1)        ヨーロッパを中心に47カ国が参加している政府国際機関、欧州評議会による採択。日本もカナダや合衆国とともにオブザーバー参加している。現在33カ国が批准し、EU加盟国及びその他の12カ国が署名している。批准や署名はヨーロッパ以外の国にも開かれている。

 

2)        女性に対する暴力とは、女性であるがゆえに向けられる「ジェンダーに基づく暴力」であり、それを防止する必要な特別措置は、差別ではない。(女性ばかり優遇されている、逆差別だという意見に応えている)

 

3)        DVのみならず、性暴力、性虐待、セクシュアルハラスメント、強制婚、ストーカー、女性器切除、名誉殺人など18歳未満も含む女性へのあらゆる暴力を根絶するためのアプローチとして、暴力防止、被害者保護、包括的な政策、訴追を求めている。

 

4)        被害当事者はあらゆる支援の中心に位置づけられ、当事者の人権と安全に焦点を当てる。例えば、被害当事者が虐待者から離れる権利もとどまる権利も有するという立場に立つ。とどまる選択をした場合には、接近禁止命令や退去命令などの加害者への介入を行い、当事者の安全を守る。

 

5)        DVと女性への暴力を犯罪と位置づける。例えばレイプ。抵抗しなかったことが同意とみなされるのではなく、同意がなかったことによりレイプと定義される。

 

6)        締結国は、ジェンダーに配慮し当事者のエンパワメントを引き出す女性支援の専門家である民間女性団体と協力して、当事者支援のための行動計画を策定する。

 

7)        条約締結国代表により監視機構が組織され、15名の専門家がボランティアで監視と報告書の公開を行っている。

 

 

 

2)イランカラプテ(こんにちは)! アイヌ女性と語る、踊る

 

 2018年は北海道開拓150周年を迎えたことは知っていた。ただ、アイヌ女性から生の声を聴くのは初めてだった。開拓は、先住民から見れば侵攻と搾取の始まりだった。数多くのアイヌの人々が苦役として奴隷のように働かされた。

 

 未婚、既婚に関わらず”和人“男性に強制的に愛人にされた多くの女性がいた。子どもが生まれても、出生の登録をされなかった子どももいたという。「越年婿(おつねんむこ)」とは、夏中アイヌの地に働きに来た”和人“で、冬になっても妻子の所へ帰らずアイヌ女性宅に入り込み結婚しようと迫り、越冬。雪解けの頃いなくなる結婚詐欺のような男たち。和人社会はアイヌに家父長制、男尊女卑を持ち込み、女性には教育を受ける機会が少なかった。今でもアイヌ女性の収入が低いことを、実態調査の結果が表している。また、同化政策・アイヌ語の使用禁止によって世代間でコミュニケーションがとれなくなったという。

 

 さらに、祖先から継がれたストーリーを樺太アイヌの女性が語る。1876年サハリンに住んでいた樺太アイヌ854名が宗谷に強制移住させられ、さらに石狩川河口の現在の江別市に移された。洪水にあえば流されるような土地で、実際現在は石狩川の川底になってしまっているという。飢餓と病気のため約半数の400名ほどが亡くなり小さなお墓がたくさんある。墓碑に樺太移住旧土人先祖の墓」という差別用語がそのまま刻まれている。一方、蝦夷開拓使として教科書にも載っている榎本武揚の名前をつけた公園と高い塔の上に立つ石像が、今でも辺りを見下ろしているという。

 

 「アイヌ女性会議」メノコモによるマイノリティー女性の人権向上と文化の継承を目標とした活動報告とともに、最後は参加者全員で輪になり、労働の踊りで会を締めくくった。

 

 

 

3)2019年「第4回世界女性シェルター会議」に向けて

 

 本シンポジウムには、台湾他シンガポール、東チモール、インド、マレーシア、ベトナム、ネパールのシェルタースタッフも参加し、それぞれの活動報告がなされた。一方、日本の研究者グループから各国における関連法、保護命令、被害者支援についての比較調査報告があった。どの国も法律の不備、人材や資金不足のなか、クラフト製作販売などのソーシャルビジネスを行い、当事者とともに何とか生き延びようとしている。

 

2012年にアメリカで開催された第2回同会議後にアジアシェルターネットワークが結成された。本部は台湾にあり、今年11月に「第4回世界女性シェルター会議」が台湾、高雄(115~8日)で開催される。ホスト国台湾からの大会アピールで閉会となった。参加のためのエントリーは下記サイトから。日本語ページもでき、全体会には日本語通訳も入る予定。参加してみませんか?

 

URLhttps://fourth.worldshelterconference.org/ja

 

教育費サポートブック <2018年版>

子どもの高校、専門学校、大学への進学は、子育て中の親にとってはうれしい半分、経済的に不安がつきまとうものです。どれくらいかかるの?どう準備すればいいの?どんな支援があるの?奨学金って?様々な疑問に答えるために、「NPO法人しんぐるまざーずふぉーらむ」が作った一冊です。 これまでも渦中の女性からはたびたび相談を受け、情報提供や同行支援してきましたが、今回フォローアップ事業として支援に関わった子育て中のひとり親女性に、フードドライブの食べ物と一緒に届けました。

女性への暴力をなくす運動

 

2018年のノーベル平和賞は、女性への性暴力の根絶を訴え、草の根の支援活動を行っている2人に贈られた。この賞が、紛争下の女性や少女への性暴力に焦点を当てたことは大きな意味がある。中東やアフリカだけでなく、中国や朝鮮でもバルカン半島でも、現在ではヨーロッパに向けて難民が船を漕ぎ出すリビアでも、歴史に学ぶことなく、女性への性暴力は繰り返されている。性暴力は相手を徹底的にねじ伏せ支配する、最も有効な手段だから。

 

 

 

受賞者の1人は、少数民族で少数宗教の家に生まれたナディア・ムラドさん。2014年にISに捕えられ「性奴隷」としてすさまじい性暴力を受けた被害当事者で、ドイツに逃れた。同じ時に捕えられた高齢者や男性は殺害された。難民に紛れてIS戦闘員もヨーロッパで難民となっている今、彼女の恐怖心がなくなるのはまだ先のことと思われる。それでも、 2015年から「2度とこのような性暴力をおこしはならない」と訴え続けることができるのは、同じ気持ちで当事者に寄り添っている支援者がいて、生活や言葉の支援、トラウマケアを受けられているからではないか。

 

世界中で♯MeToo、♯UsToo、♯WithYou運動など、セクハラ、わいせつ行為などの性暴力に女性たちが声を上げ始めたこともこの受賞を後押ししたと信じている。ただ残念なことに、日本ではこの運動は低調に終わるどころか、セクハラを受けたテレビ局の記者の所属する会社も、加害者の勤務先である財務省も事実を隠そうとしたり、加害者を容認する発言が続き、被害者がバッシングされる2次的加害を起こさせる結果となってしまった。また、実名を公表してレイプ被害を告発した伊藤詩織さんは、捜査当局である警察やネット上でも風当たりが強く、「セカンドレイプ」を受けたと話している。このことは国際的にも批判を浴び、日本にいては危険だと今はヨーロッパで生活せざるを得ない状況が続いている。これでは、♯MeToo運動は広がらない。まだまだ被害当事者が声を上げられない。

 

 

 

とはいえ、国連による「女性への暴力根絶国際デー」1125日に合わせて、日本でも2001年から「女性に対する暴力をなくす運動」は続いており、この期間には「女性の人権の尊重のための意識啓発や教育の充実」を目的に様々なキャンペーンが行われている。キャンペーン自体が目的ではない。やっとの思いで声を上げた被害当事者の声を、多くの人が真摯に受け止め、問題を理解するよう意識が少しでも変わっていくためのものだ。性暴力に遭ったことがないという女性に会ったことがない。これは不幸にして被害に遭った誰かのことではなく、私のことでありあなたのことだからだ。どのような形態であれ、暴力で問題を解決しないことを続けていくしかない。

 

 

 

AWCもこの数年、国際ソロプチミスト太宰府、福岡-北、福岡-南各クラブのメンバーや行政職員とともに街頭での啓発活動に参加し、ホットラインのインフォメーションカードを手渡している。今年はカードを一新し、女性相談業務を受託しているホットラインの情報も一緒に入れて街頭に立つ予定だ。もし手にされたら、困っている女性に手渡してほしい。

 

パープルリボンをつけよう

 

パープルリボンは女性への暴力を失くしたいと言う思いから、1994年アメリカ、ニューハンプシャーのベルリンという町で、性暴力の被害を受けた人々による集まりから始まりました。パープルリボンをつける事で、多くの人にこの問題の深刻さを伝え、関心を持ってもらい、暴力が絶対にあってはならない事を周囲に広げていくことを目指しています。

 

アジア女性センターは、被害者女性支援を行いながら、2001年にパープルリボンプロジェクトをスタートさせ、女性への暴力の根絶を求め続けて今までに至り、販売も手掛けております。 

 

1112()から25()までの2週間は、女性に対する暴力をなくす運動週間です。私自身もパープルリボン知ったのは、AWCと出会ってからでした。

 

皆さまも、是非この機会にリボンをつけて、身近な人にもご紹介ください。ご購入希望の方はAWCまでお問い合わせください。

 

難 民 を 知 る 一 冊

 

ターメリック、コリアンダー、クミン…遠い国の香りがするこれらの香辛料、みなさんにはどのくらい馴染みがあるだろうか。難民支援協会が出版した『海を渡った故郷の味』という本がある。迫害を逃れて日本にたどり着いた難民の人たちが、故郷の味を思い出しながら寄せたレシピが、美しい写真と味の思い出とともにつづられている。

 

 

 関東の大都市周辺を中心に増えている難民申請者に対し、地方での受け入れや支援に理解を拡げようと、数年前に難民支援協会(難民を支援する日本のNPO団体)の職員の方がAWCを訪問された。平和で安全だと思ってやってきた日本での厳しい現実を必死に生きる難民申請者や、人道的な立場から公的制度の枠組みを越えて工夫を重ねて支援をしている官民の人たちのあり方に胸を打たれた。この本は、その折に紹介された一冊だ。

 

 

 「故郷にいる母から、時々母のドレスを送ってもらいます。『洗わずに送って』と必ず伝えます。それは、服に残った母の匂いから、母のこと、故郷のことを思い出すことが出来るから」という難民の方の話も紹介されている。

 

 誰にとっても、“食べること”は生活そのものだろう。誰かが作ってくれた料理、味、におい、食卓を囲んだ温かい思い出…。平和な国に生まれた私たちとは、国情が大きく異なる難民の人たちだが、この本を手にすると同じ時代の同じ世界を生きる人たちであることをより肌感覚で知る。多くの人たちにお勧めしたい一冊だ。

 

リレーエッセイ  風

 

現在、私は、子ども達も巣立っていき、夫婦二人の生活になった。そして、それとは別に同居こそしていないが、家族がふたり増えた。義父と孫である。義父は、90歳を過ぎてから、家の近所の施設に入所してきた。そして、孫は2年10か月前に、この世に現れた。ひとりは人生いろいろな経験をされ生き抜いてこられた大先輩であり、かたや一方は人生これからのスタートラインに立ったばかりのふたりである。

 

 

 義父は時々、私が誰だかわからなくなることがある。義父の所に行き部屋の掃除をしていると、「ありがとう。どこに住んでいるの。寮か?」と言われる。「この近くの家です」というと安心したように「それはよかった」といわれる。「きれいにしてもらって,すまないのう」と義父のふるさとのことばで言われる。「名前は?」と聞かれ、「○○です」というと、義父は満面の笑みを浮かべ、「僕も○○、同じだ」と言われる。私は,おかしくなって「私は、あなたの息子の嫁ですよ」と自己紹介をする。すると、「それは、失敬」と笑いながら、片手で失敬というジェスチャ―をされる。二人で大笑いをす  る。物忘れが多くなってきた義父であるが、感謝の気持ちや、ユーモアが絶えない。本当に、心根の優しい方なのだなと思う。ちなみに義父は、自分は兄弟の中でも一番、母親に可愛がられていたというのが自慢である。

 

 

孫は、最近は絵本が好きで、一緒に読むと、とても真剣な表情で聞いている。「さっちゃん」の童謡をきいて、「さっちゃん、バナナを半分しか食べられないんだって。さっちゃん、遠くに行っちゃうんだって、さびしいね」と、少し心配そうに言う。まだ、この世に生まれて2年くらいしかたっていないのに、人間の喜怒哀楽をこんなにも感じ取る事が出来ることに驚きを感じる。

 

仕事柄、DVや、虐待に接することが多い私にとって、義父や孫と接する時間はとてもほっとするひとときでもある。孫の感受性の豊かさに触れるとき、暴力が起こっている家の中にいる、子ども達のことが頭に浮かぶ。おとなは、気づいていないが子どもの心はいろんなことを感じている。そして、それが、何なのか言葉では表現できないでいる子どもたちだからこそ、なおさら、周りのおとなが子どもの心に目を向けなければならないと思う。

 

 

義父と孫、年の差は93歳であるが、ふたりに共通の所がある。

 

それは、ふたりの笑顔である。その笑顔は、純粋で、そこには何の計算も損得もない。心の底からの笑顔で、私の心にいつも温かい風を送ってくれる。